アピストグラマをもっと知りたい。気付いたら嵌っていたドワーフシクリッドの飼育記録を綴ったブログです。

2019年5月30日木曜日

種の同定と表記の話

Apistogramma flabellicauda
またまたA. flabellicauda

Apistogramma flabellicauda
あまりフィンスプさせないようにして尾鰭の裂けが自然治癒するのを待つつもりでしたが、よく見てみると裂けてからかなり時間が経過しているようで、切り口が既に硬化して自然治癒は期待できないと判断しオペを実施しました。

Apistogramma flabellicauda
さてここからはアピスト種の同定と表記についての話。

厳密な種の同定や表記方法について、あまり興味ないと言う方は適当に読み飛ばしてください(笑)

アピストのDNA解析作業が進むにつれ今後変わってくる可能性がありますが、現在の種の分類は、口や目の下などにある小さな窪み(孔)の数を基に数系統に分け、その配下に複数のグループがあり、そのグループ内にそれぞれの種が登録されています。

種を同定する際に最も重要な要素がメラニン色素で表現された黒い部分です。ラテラルバンド・ラテラルスポット・コーダルスポット・アナルスポット・アブドミナルストライプ(バンド)などがそれに当たります。

鰭の形や大きさ、体色などは販売する際にクラス分けや目利きする重要な要素ではありますが、種の同定に関しては参考程度に留めあまり重要視されていません。それらは成長や環境により常に変化する部分なので同定の際にこれらを重要視すると混乱してしまう可能性があるからです。

学名記載された文書を読んだことがある方は見たことがあると思いますが、そこには大概ホルマリン漬けされた写真が掲載されています。

以前は『こんな死んだ魚の写真を見てもどんな種なのか判断出来ないよ!』と思って見ていましたが、同定の工程に関してはメラニン色素(パターン)さえ確認出来れば他は関係ないというのが今は分かりました(^-^;

アピスト種の同定は難しいとよく言われますが、体色を判断材料に入れてしまうためにより複雑化させてしまっている感があります。

種の判断要素さえ分ってしまえば同定作業自体はとても単純そして明快です。

例えばこのフラベリカウダ。

全体の形からイニリダエグループに属している種だと分かります。

ダニバンドが無いので、「ウアウペシー」か「フラベリカウダ」か「リネアタ」に絞られます。

尾鰭の中央のみに格子柄があるので「ウアウペシー」と「リネアタ」の線が消え、「フラベリカウダ」と同定出来ます。

Apistogramma flabellicauda
体色の話ついでに・・・、

以前もどこかの記事で書いたと思いますが、アピストの体色は外敵から身を守る保護色です。

外敵に見つからないように生息地の環境色に体色を近づけています。ですから同一種であっても採集場所が異なれば体色も変化します。
例えば、飼育したこと無いけど・・・、ロシ〇エ。元々黄色い色素を強く発色させるアピストなので、入荷した際は黄色くなくても飼育環境(特に底床の色)に合わせて体色は変化していくはずです。

入荷した時の体色と違ってきた、と思う時は底床や水、照明の色を変えてみるのも良い方法だと思います。

もちろん適切な水質(バクテリアの状態)や他魚との関係も重要です。アピストはテリトリーを守る魚なので他魚よりも優位に立っていないと本来の色を発色しません。

その中で隈取りに関しては、他魚との関係性により出現の違いがあるように思えます。適正な環境だとしても自分よりも強い相手が同水槽内に居る場合は本来の隈取りは出てきません。自分よりも弱い相手やメス個体に対して自らの威厳を示すためだと思います。

もちろん餌も体色を決定する重要な要素です。
特に赤色の色素は体内で生成することが出来ないので餌から摂取して色素胞に蓄積させる必要があります。しかしいくら色揚げ用の餌を与えても飼育環境が適正ではない場合は本来の体色は表現されません。

Apistogramma flabellicauda
ここからは種の表記方法について。

既に学名記載されている種は、Apistogramma abc (略してA. abcAp. abc)と表記されます。

【sp.】
sp. とは「species」の略で、アピストグラマ属の一種という意味。
学名記載されているいずれの種とは異なる別種の場合、本来は「Apistogramma sp.」と表記され、アピストグラマ属であるがまだ正式に記載されていない別種という表記になります。

しかし学名記載されていない種が多いため、sp. の後にその種を判別し易いような言葉を入れているのが現状です。

また音羽にある某店では、sp. を省略して「Ap. "ロートカイル"」や「Ap. "プッツェール"」というようにダブルクォーテーションで囲んで記載種なのか否かを表現しています。

【cf.】
名前の前に「cf.」が付いている種がありますが、cf. とは「confer」の略で、〇〇〇という種に似ているので同種だと思うけど根拠が不十分、という意味。

しかし先に書いたように、体色や採集場所の違いにより安易に cf. を付与すべきではありません。既に知られている種とは明らかにメラニンパターンが異なっている場合に cf. が付与されます。

それから「sp.」と「cf.」の両方が付いた名前を時々見ますが、これらを付与する順番により意味が大きく変化します。

A. sp. イエローミウアは、TomCのサイト( http://www.tomc.no/ )では「A. cf. sp. Miua」と表記されています。

A. sp. Miua」に似ているけど断定出来ないから、sp. の前に cf. が付いてます。

しかし、「A. sp. cf. Miua」と表記されていたらどうでしょう?

『何のこっちゃ?これでは完璧に新種じゃん!』ということになります。cf. は sp. の前に付けましょう(笑)

実際のところ、A. sp. イエローミウアのメラニンパターンを見るとA. メンデジーの方に近いと思うので、個人的には「A. cf. mendezi」の方が良いと思うんだけど、尾鰭がメンデジーとは違うので、「A. cf. sp. Miua」ではなく「A. cf. mendezi」でもなく「A. sp. イエローミウア」が一番しっくりきます。まぁ名前はともかくとして(笑)

【aff.】
たまに種名の前に aff. が付いている種を見かけますが、aff. とはラテン語で「affinis」の略で、〇〇〇という種に似ているけど多分別種だな、という意味。
例:A. aff. flabellicauda

cf. との差が微妙ですが、aff. は cf. よりも下位レベルで該当の種とは別種の可能性が高くなります。

従って予め sp. を付与して「A. sp. aff. flabellicauda」と表記する場合が多いようです。

cf. とは異なり sp. の後に aff. が付きます。

例えばA. sp. Miuaに近いけど別種だよなぁ~、という場合は「A. sp. aff. sp. Miua」となるのかな(笑) これだったら「A. sp. △△△」とした方がスッキリしますね(笑)

Apistogramma flabellicauda
ところで、"ロートカイル"って未記載種なの?

古くから知られている種だけど未だに記載されていないの? 確かにテトラ本などの洋書にもロートカイルは載っていません。

しかしちゃんと正式な学名が付いてますよ。「Apistogramma uaupesi」です。

"Rotkeil"はドイツ語で、英訳すると"Red wedge"、更に和訳すると"赤い楔(くさび)"となります。

A. sp. Rotkeil と呼ばれた種が記載されて A. uaupesi になったのか、それとも先にA. uaupesiが記載された後に尾鰭が赤いから別種扱いにしてA. sp. Rotkeilという名が付いたのかは定かではありませんが、いずれにしてもドイツは元より欧米ではA. sp. Rotkeilという名前はほとんど使用されず、現在はA. uaupesiと呼ばれています。

先に書いたとおり体色は種を同定する要素にはならないので、尾鰭が赤いからといってメラニンパターンが異なっていない限り別種にはならないという考えによるものです。

「ウアウペシー」という名前が誤解を招いている可能性もあります。ウアウペス川で発見された種なので「ウアウペシー」という名前が付いたと思われますが、同種はネグロ水系に広く分布していますので他の川で採集されたとしても名前は変わりません。「イニリダエ」も同様です。

以上、種の同定と表記についての話でした。。。


Apistogramma flabellicauda
さて、オペから25日後のフラベリカウダ。

まだ切り口以降の色が完全ではありませんが、多分今後色は元通りになっていくはずなので無事に手術成功と言えるでしょう!

ただ・・・、術後安静にさせ過ぎたせいか、背鰭の一部が溶けてしまった・・・。こちらは自然治癒を待つことにします((+_+))


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Toad The Wet Sprocket - Fly From Heaven 平成6年(1994)